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日本もバブルが崩壊してバランスシート不況に陥ると、政府は財政政策で景気を下支えしてきた。
日本では商業用不動産がピークから全国平均で87%も下がり、企業はGDP比で6%にもなる年間3O兆円の借金返済に回ったにもかかわらず、これらの要因から発生したデフレ圧力を政府が財政出動で中和したため、日本のGDPは名目値でも実質値でもずっとバブルのピークを上回った。
この間、バブルの崩壊で国民の富が株と土地だけで15OO兆円も失われたことを考えると、今回の日本の財政政策は人類史上最も成功した経済政策の一つと言えよう。 日本の財政出動に一つ大きな落ち度があったとしたら、それはいつも後手に回っていたことである。
日本が不況に陥った当初は、民間が債務の最少化を最優先することで発生する「バランスシート不況」という考え方自体が経済学にはなかったため、不況は単なる景気循環的なものと捉えられ、金融緩和やHポンプの呼び水Hのような公共投資ですぐ克服できるものと思われた。 実際に公共事業を拡大すると、景気が良くなった。
景気が良くなると、財政赤字を心配してすぐ政府支出をカットしたが、そうなると再び景気が悪化した。 慌てて次の公共事業で景気を良くしたが、それが確認できるとまた財政赤字を心配して支出をカット。
薬を一日飲んで良くなったら薬を止める・・・そんなことを続けた結果、病気は長引き、薬代もどんどん嵩んで行った、というのが過去15年間の日本の政策対応の歴史だった。 この時、日本で理解が不充分だったのは、民間が通常の利益の最大化からバランスシート修復(H債務の最少化)の方に行動の軸足を移すことで発生するバランスシート不況は、実際に民間のバランスシートがきれいになるまでずっと続くということであり、この間はずっと政府が景気の下支えをやらないとかえって回復は遅れ、下手をすると経済はとんでもないデフレスパイラルに突入するという点である。
したがって日本の場合、このことを理解した政府が95、6年の段階で、「これからってください。 5年してみなさんのバランスシートがきれいになったら、政府は政府のパランスシートの修復、つまり財政再建に向かいます。
その時は、みなさんは前向きの行動に出て、景気を下支えしてください」と言っていれば、20OO年ごろには日本はバランスシート不況から脱却できたと思われる。 残念ながら、日本政府は毎回、行き当たりばったりの財政政策をやってしまったから、そのようには展開しなかった。
その結果、日本の不況は、最低5年は余計に長引いてしまったと思われる。 そのせいで、少なく見積もっても10O兆円以上、財政赤字が拡大してしまった。
この間違いだけはアメリカに繰り返してほしくない。 アメリカに期待したいのは、シームレス(継ぎ目のない)な3年から5年の計画である。
それも公共事業中心、政府支出中心の景気対策である。 教育でも何でもいいが、政府支出を中心とする中期的な財政出動計画が出てくれば、この問題に対応できる。
実体経済に対しては公共投資、金融危機に対しては資本投入、この両方が揃うことになれば、アメリカはサブプライム問題を克服できるであろう。 アメリカはまだバブル崩壊を否定する「ディナイアル」の段階その意味では、今のアメリカは1992年ごろの日本にあると言える。
当時を思い出していただくとわかるように、バブルが崩壊してから1年半ほどの日本は、英語でいう「ディナイアル」の世界にあった。 ディナイアルとは「否定」「拒絶」という意味であり、いわばバブル崩壊による景気の悪化を認めずに「大丈夫だよ」「またすぐ元に戻るよ」と否定している状態である。
実際、当時の「経済白書」などは、証券、金融、不動産など、バブルに踊った業種はひどい状況にあるけれど、まともにモノづくりをやってきた産業界はすべて健全で、経済活動の水準自体は非常に高く、その状態は今後とも続くであろう、と書いていた。 ながら、それまでの景気拡大はその証券、不動産、銀行の3つがか機関車となって引っ張ってきたわけだから、肝心の機関車が頓挫した時、それに替わる砂原動力uがなかったら経済全体が落ち込んでしまう。
日本はギリギリのところで政府がその機関車役を引き受けたわけだが、それでも前述の3分野が80年代末に提供したような需要の拡大は提供できなかった。 アメリカでも、これとまったく同じ現象が見られた。
当初は多くの人たちが「住宅バブルもサブプライム問題も全体から見ればたいしたことはない」と言っていたのだが、これも「ディナイアル」の畏に猷っていたのである。 というのも、アメリカの場合は住宅バブルが経済を引っ張っていたわけであるから、それが20O6年に崩壊した段階で、それに替わる機関車が出てこなければ、経済が減速するのは当然のことだからである。
アメリカの経済活動それ自体は、図にあるように現在もまだ高い水準を保っている。 失業率はO8年6月時点でようやく5・5%になったところである。
アメリカで失業率が5%前後というのは、大変いい数字である。 アメリカ各地を歩いてみると、まだ求人広告も出ているし、一般の人たちからすればお先真っ暗という状況ではない。
設備稼働率も頭打ち状態だが水準自体は高い。 だからこそ、「サブプライムで損をさせた連中は責任を取れ」と言っていられるわけであるが、日本の前例を見ると、バブルが崩壊して20カ月を過ぎたあたりから景気が急激に悪くなっている。
現在のアメリカも同様に、O8年の1月ぐらいから急に景気の統計が悪化した。 住宅価格のピークを20O6年6月とすると、O8年1月というのはそこからほぼ20カ月が経ったあたりなのである。
繰り返せば、それまで経済を引っ張ってきた機関車がダメになり、それに替わる別の機関車が出てこなかったら、ざっと20カ月程度経過すると、そのツケが回ってくる。 今まさにアメリカはその段階にあるのである。
ただし92年の日本と今回のアメリカが決定的に違うのは、アメリカの企業のバランスシートは決して悪化していないということである。 日本では企業のバランスシートがまずバブル崩壊で段損し、その後で家計と銀行が影響を受けた。
その一方で今回のアメリカは、家計と銀行部門のバランスシートが段損している。 修復されるまでは消費もなかなか回復しないだろう。
また銀行の方も、バランスシートを修復し、自己資本比率を元に戻すまでは貸し渋りをやめるわけにいかない。 まして、積極的にリスクをとってお金を貸すことは非常に難しい。
この日米の違いから、今回のアメリカでは企業部門が景気を支えてくれるのではないかという期待がある。 アメリカの企業は景気に敏感である。
たとえ自分たちのバランスシートがきれいであっても、景気が悪化している、と感じたら彼らは設備投資に極めて慎重になる。 それゆえ、企業のバランスシートが健全だから、彼ら企業がアメリカ経済を牽引してくれるであろう、という議論は成り立たないと思われる。
政府の対策としては、財政政策の他に金融政策がある。 金融政策の方はO8年5月の時点でFRBが大幅に金利を引き下げている。
昨年の9月、5・25%だったFFレートは現在2・00%まで下がっているから、約半年ですでに3・25%も下げたことになる。
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景気が良くなると、財政赤字を心配してすぐ政府支出をカットしたが、そうなると再び景気が悪化した。 慌てて次の公共事業で景気を良くしたが、それが確認できるとまた財政赤字を心配して支出をカット。
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したがって日本の場合、このことを理解した政府が95、6年の段階で、「これからってください。 5年してみなさんのバランスシートがきれいになったら、政府は政府のパランスシートの修復、つまり財政再建に向かいます。
その時は、みなさんは前向きの行動に出て、景気を下支えしてください」と言っていれば、20OO年ごろには日本はバランスシート不況から脱却できたと思われる。 残念ながら、日本政府は毎回、行き当たりばったりの財政政策をやってしまったから、そのようには展開しなかった。
その結果、日本の不況は、最低5年は余計に長引いてしまったと思われる。 そのせいで、少なく見積もっても10O兆円以上、財政赤字が拡大してしまった。
この間違いだけはアメリカに繰り返してほしくない。 アメリカに期待したいのは、シームレス(継ぎ目のない)な3年から5年の計画である。
それも公共事業中心、政府支出中心の景気対策である。 教育でも何でもいいが、政府支出を中心とする中期的な財政出動計画が出てくれば、この問題に対応できる。
実体経済に対しては公共投資、金融危機に対しては資本投入、この両方が揃うことになれば、アメリカはサブプライム問題を克服できるであろう。 アメリカはまだバブル崩壊を否定する「ディナイアル」の段階その意味では、今のアメリカは1992年ごろの日本にあると言える。
当時を思い出していただくとわかるように、バブルが崩壊してから1年半ほどの日本は、英語でいう「ディナイアル」の世界にあった。 ディナイアルとは「否定」「拒絶」という意味であり、いわばバブル崩壊による景気の悪化を認めずに「大丈夫だよ」「またすぐ元に戻るよ」と否定している状態である。
実際、当時の「経済白書」などは、証券、金融、不動産など、バブルに踊った業種はひどい状況にあるけれど、まともにモノづくりをやってきた産業界はすべて健全で、経済活動の水準自体は非常に高く、その状態は今後とも続くであろう、と書いていた。 ながら、それまでの景気拡大はその証券、不動産、銀行の3つがか機関車となって引っ張ってきたわけだから、肝心の機関車が頓挫した時、それに替わる砂原動力uがなかったら経済全体が落ち込んでしまう。
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